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投資の目的

今回は、投資の目的について考えてみましょう。つまり、「なぜ、投資を行うのか?」ということですが、「財産を増やすために投資する」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、良く考えてみますと、違うような気もします。少し、年代を追って具体例で考察してみましょう。

まず、学校を卒業して社会に出て働き始めると、所得を得るようになります。所得恒等式では、所得=消費+貯蓄(投資)となりますが、社会に出たばかりの時は、基本的には貯蓄(投資)はゼロとして良いでしょう。

20代では、とりあえず節約して消費を押えて、投資のための元本を蓄える時期となります。

30代になってくると、多少なりとも投資の元本が蓄えられてきますので、この元本を用いて投資を行います。若い時は、仮に投資に失敗しても「やり直しがきく」、つまり時間があるので、ハイリスク・ハイリターン型の投資を行う人も多く存在します。逆に言えば、それなりのリスクを伴う投資を行わなければ、財産が増えて行きません。

40代になると、それなりに財産も形成されてきていますが、将来のために財産形成を図る最も重要な時期であり、引続き、相応のリスクをとって、積極的に財産形成を進める時期です。投資経験も20年くらいになると、リスクとリターンの評価に加え、さまざまな投資商品の仕組みも理解できるようになるので、財産形成にとって最も重要な時期であると言っても良いと思います。

50代前半になると、そろそろ老後のことも考えるようになってきます。過去に投資で財産を形成してきた人は、これを失わないような投資にそのスタイルを変更していくのもこの時期です。つまり、大きなリスクを取る投資を行ってそのリスクが顕在化すると、形成した財産を失うことになりますが、この時期になって財産を失うと、若い世代と異なって時間が限られていますので、回復困難になってきます。従って、レバレッジの効いた投資等からは、徐々に手を引いていくことになり、ハイリスクの投資は避けるようになります。

50代後半では、すでに財産を形成した投資家は、もはや財産を増やすことを主たる目的とはせず、むしろ財産の保全を考慮に入れてポートフォリオを変化させていきます。この時期は、インカムはすべて消費に回して、豊かな人生を送る、つまり「クオリティ・オブ・ライフ」実現の初期段階と言えます。不動産投資を例にすれば、自分の生活を豊かにするために、所有している投資用不動産から獲得した家賃はすべて使ってしまうが、投資の元本である不動産はそのまま維持(保有)するような傾向が見られます。

さて、60代になると、インカムに加えて、いままで投資で築いてきた財産を少しずつ取り崩して、引続き、豊かな生活「クオリティ・オブ・ライフ」をエンジョイする時期が続きます。不動産投資を例にすれば、元本である土地・建物などを少しずつ売却して、売却代金を消費に回すようになります。

海外旅行やロングステイなど、元気に遊びまわれるのは70代の半ばくらいまでとなりますので、老人ホームなどの資金を残して、いままで形成してきた財産を取り崩していきますので、財産は減っていきますが、引続き豊かな生活を送ることができます。

いよいよ、体も自由が効かなくなる時期が訪れます。その時になって、多額のお金を持っていても、もはや有意義に使うことができません。お金を「あの世」に持って行くこともできませんので、財産が多額に残ってしまうことは、「クオリティ・オブ・ライフ」を十分に実現できなかったことになります。もちろん、子孫のある方は、子孫にある程度は財産を残すことも計画に入れているでしょう。

ここで申し上げたいのは、投資の初期~中期の段階においては、投資の目的は財産を増やすことですが、その先は「使うため」に過去に蓄積した財産を取り崩して消費することになります。つまり、投資の目的とは、「将来の消費のため」と考えるべきではないでしょうか。財産を増やすこと自体は目的ではなく、手段に過ぎません。

また、上記でお分かりのように、世代によって投資スタイルとポートフォリオは変更していくべきであり、従って、「投資は常にExit(出口)を考えて選択する」ということが肝要です。自宅は永久に保有しても、投資用不動産は永久に保有するわけではなく、また、より良い投資のためにはポートフォリオの入れ替えも必要であり、出口戦略は投資において重要なファクターです。これが不十分ですと、形成した財産を取り崩して消費に回し「クオリティ・オブ・ライフ」の実現が困難になります。

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