ひと口にマレーシアの不動産と言っても、クアラルンプルールとジョホールでは全く異なります。数年前から、ジョホールに関しては多くの問合せを頂いており、その都度、お客様にはジョホールのリスクについて説明してきましたが、リスクの概要について改めて皆さまにお伝えしたいと思います。
ジョホールではイスカンダル計画を背景に、すでに多数のコンドミニアムが建設中です。これらのコンドミニアムは、2014年頃から徐々に完成を迎えることになりますが、「一体、誰が住むのか?」という素朴な疑問があります。コンドミニアムの購入者は、そのほとんどが外国人投資家であり、その数は10万人を超えています。実際に自分で住むため、すなわち、実需の購入は極めて僅かです。
「マレーシア人が住むのか?」という観点で観察してみますと、イスカンダル計画の初期段階では、現地の建設業以外にはさしたる雇用はありませんし、マレーシア人はジョホールの治安の悪さを良く知っています。ゲートシティの内側は問題ないとしても、わざわざ治安の悪い場所に多数のマレーシア人が移り住むとも思えません。そもそも、コンドミニアムの値段もローカルの人たちが購入あるいは賃借できるような金額ではありません。
「シンガポールの人が移住すると思いますか?」これは、ほとんどあり得ないと思われます。富裕層は、わざわざジョホールに都落ちしませんね。団地国家であるシンガポールの庶民は、政府の住宅開発局が建設した公共住宅団地が比較的安価に購入できますので、わざわざ、高額のジョホールを買うインセンティブもありませんね。ジョホールからシンガポールへの通勤は、ボトルネックもありますので、必ずしも快適ではありません。
新しい産業が発展して、人が世界中から集まってくるというシナリオを頭から否定するつもりはありませんが、ここで如何なる産業を展開するのでしょうか?金融ならお隣のシンガポールに勝ち目はありませんし、工業では人件費の安い地域がアジアにはいくらでもあります。ITも今からインドを追いかけても難しいでしょう。観光地でもありませんし...。
クアラルンプールは、継続的に人口も増えていますし、ローカルの人たちの所得も徐々に上がってきていますので、以前、外国人が投資で買った物件にも、高額物件でなければ手が届くようになってきています。つまり、クアラルンプールの不動産には実需がありますが、ジョホールにはしっかりした実需が見出せません。
また、マレーシアという国は、以前から「華々しい計画」を打ち上げては、途中で頓挫するということが繰り返されてきました。イスカンダル計画が頓挫するかどうかについては、コメントできるような状況ではありませんが、マレーシアでの不動産投資に経験がある方なら誰でもお分かりのように、「遅延することだけは間違いない」ですね。もちろん、10年遅れ、20年遅れでイスカンダル計画は完成するかもしれません。これくらいのスパンでのハイリスク・ハイリターン投資であることを認識して資金をつぎ込むのであれば、それは自己責任ですので、他人がとやかく言う問題でもありませんが、ジョホールにおける投資は、もう少し時間が経過して、しっかりと見極めてからでないと、「ジョホール・バブル」に踊らされて、多額の損失を抱えることになりかねません。
上記の説明でお分かり頂けると思いますが、「何もない場所」に壮大な計画を立てているわけで、上手く行くための条件としては、さまざまな不確実性がすべて思惑通りに組み合された場合にのみ、この計画が成功するのだろうと分析しています。特に、初期の段階では「実需」が乏しいので、コンドミニアムが完成しても賃借人が入らず、家賃を受け取ることができない状況が来年から起こり始めるのではないかと予想しています。
ようするに、上手く行けばリターンは得られるのでしょうが、非常に高いリスクを抱えている投資でることが、当社のお客様にはお勧めしていない理由です。